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坊っちゃん  (角屋から出る二人の影を〜) (取り扱い店:楽天ブックス)

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 ■青空文庫から『坊っちゃん』を一部抜粋
 角屋から出る二人の影を見るや否や、おれと山嵐はすぐあとを尾(つ)けた。一番汽車はまだないから、二人とも城下まであるかなければならない。温泉(ゆ)の町をはずれると一丁ばかりの杉並木(すぎなみき)があって左右は田圃(たんぼ)になる。それを通りこすとここかしこに藁葺(わらぶき)があって、畠(はたけ)の中を一筋に城下まで通る土手へ出る。町さえはずれれば、どこで追いついても構わないが、なるべくなら、人家のない、杉並木で捕(つら)まえてやろうと、見えがくれについて来た。町を外(はず)れると急に馳(か)け足(あし)の姿勢で、はやてのように後ろから、追いついた。何が来たかと驚ろいて振(ふ)り向く奴を待てと云って肩に手をかけた。野だは狼狽(ろうばい)の気味で逃げ出そうという景色(けしき)だったから、おれが前へ廻って行手を塞(ふさ)いでしまった。
「教頭の職を持ってるものが何で角屋へ行って泊(とま)った」と山嵐はすぐ詰(なじ)りかけた。
「教頭は角屋へ泊って悪(わ)るいという規則がありますか」と赤シャツは依然(いぜん)として鄭寧(ていねい)な言葉を使ってる。顔の色は少々蒼い。
「取締上(とりしまりじょう)不都合だから、蕎麦屋(そばや)や団子屋(だんごや)へさえはいってはいかんと、云うくらい謹直(きんちょく)な人が、なぜ芸者といっしょに宿屋へとまり込んだ」野だは隙を見ては逃げ出そうとするからおれはすぐ前に立ち塞がって「べらんめえの坊っちゃんた何だ」と怒鳴り付けたら、「いえ君の事を云ったんじゃないんです、全くないんです」と鉄面皮に言訳がましい事をぬかした。おれはこの時気がついてみたら、両手で自分の袂を握(にぎ)ってる。追っかける時に袂の中の卵がぶらぶらして困るから、両手で握りながら来たのである。おれはいきなり袂へ手を入れて、玉子を二つ取り出して、やっと云いながら、野だの面へ擲(たた)きつけた。玉子がぐちゃりと割れて鼻の先から黄味がだらだら流れだした。野だはよっぽど仰天(ぎょうてん)した者と見えて、わっと言いながら、尻持(しりもち)をついて、助けてくれと云った。おれは食うために玉子は買ったが、打(ぶ)つけるために袂へ入れてる訳ではない。ただ肝癪(かんしゃく)のあまりに、ついぶつけるともなしに打つけてしまったのだ。しかし野だが尻持を突いたところを見て始めて、おれの成功した事に気がついたから、こん畜生(ちくしょう)、こん畜生と云いながら残る六つを無茶苦茶に擲(たた)きつけたら、野だは顔中黄色になった。


■『坊っちゃん』などの著作権が切れている作品は青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)でも読むことができます。


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